フランス映画「A tout de suite」(2004)

「A tout de suite」Benoit Jacquot(2004)フランス

パリのふたりの画学生のおんなの子。
 街で仲良くなった男は、銀行強盗で殺人犯であった。
 いきなり恋が燃えあがる。
 しかし、このおんなの子ふたりは、その銀行強盗の若者に突いて、パリを去る。
 逃避行のあいだ、二組のカップルは熱く愛し合う。

 この若者たちはモロッコ出身で、まずはスペインを通ってモロッコに逃げ延びる。
 しかし、追っ手がせまっているのを感じ、こんどはギリシャへと飛ぶ。
 このあたりは、まるでボニーとクライド風のノリ。
 このおんなの子はとても線が細そうにみえるが、悦びにも貪欲。
 しかし、日がたつにつれ、とりわけ片方の若者がイラついてきて、仲間割れの雰囲気まで漂いだす。

 ところがギリシャにて、ささいなことでおんなの子がミグラに引っかかり、大事にはならなかったものの、若者たちに見捨てられ、ひとりきりになる。
 じつは話はここからだった。

 ギリシャにて、見ず知らずのひとの好意に甘えたり、あるいは迫られたりもしながら、とりあえずひとつの仕事につき、あたらしいおんな友だちとからみあったり、たまたまディスコで出会った若者たちに身をまかせたりもする。
 しかし、こころはつねにあのモロッコの若者に占められていた(このへん、(一部の)ニホン人が考えるような「テイソウ」というコンセプトなどどこ吹く風)。

 いつかはパリに戻らなくてはならないと思い、帰国し、共犯ということで有罪にもなる。
 この、線がほそくて頼りないおんなの子も、仕事を見つけることに精を出し、いつかはきっと会えると思って、海外での仕事につく。
 あの三人組はいぜんとして行方不明。
 もうひとりの友だちの画学生の親は憔悴しきっている。

 すこしも声を高めることなく、このおんなの子は、生きる意味についていこうとする、けっして望みを捨てることなく。

 モノクロの映画。
 きわめてインティメイトな雰囲気。
 あるひとの生き方をこっそり覗いているような気分。
 この映画、じつは横浜フランス映画フェスティバル2005にて上映されているらしい。(わたしが観たのは、夕べのカナル11)


                         (2007/11/02)