フランス映画「Un Homme et Une Femme(「男と女」)」1966


 ・「Un Homme et Une Femme(「男と女」)」、Claude Lelouch、フランス、1966


 ほんとはアヌーク・エーメの「男と女」と記すべきところなのだろうか。

 以前に触れたことがあったか、高校のころは満足に洋画を観にはいけなかった。いなかだし、洋画を観るというのはタイヘンなことだった。村だったんだもん(笑)。
 それでも受験時代になって、上京すると(隣の県でもこんな感じだもんね)、トウキョウの名画座というのが気になった。なにしろ安い。

 渋谷の東急名画座に入った。フランス映画。それが「男と女」だった。もちろん、すぐさまこころを奪われる。ああ、フランスっていいなあ。フランス映画ってなんて素敵なんだろう。少年ではあったが、ああ、アヌーク・エーメって魅惑そのものだな、と思った。
 サントラ版も何度も買おうと思ったが、買ってない(けっきょく、お金をだして買ったLPのサントラ版は、ロバート・アルトマンの「ナッシュビル」のみ)。

 NHKBSで放送したことのあるフレンチ・ポップスの番組にも、この「男と女」のことが出てくる。


 番組の名は「懐かしのフレンチ・ポップス大全集「60−70年代、日本人を魅了したフランスのスターたち」」という、NHKBSの番組。

 番組では、クロード・ルルーシュへのインタビュー。フランシス・レイと二コール・クロワジールのデュエット、それにピエール・バローのいなかの自宅への訪問から成り立っている。

 後年、賞にも輝き、世界的ヒットを遂げたこの映画、作品としてはそれほど優れたものではないというコメントを知り、納得した。
 ルルーシュは、うだつがあがらなかったものだから、借金を返すべく、通俗的で分りやすい作品を目指したと語る。そうだったのか。
 それまでのフランス映画では、撮影の時点に音楽が出来ているというのは例が少なかったのだが、音楽がこの作品には重要だとして、ルルーシュはレイと十分に打ち合わせたらしい。それがヒットの原因。それに作詞のピエール・バローの存在も大きい。
 主人公の二人が海に船で出たときの物悲しいメロディ、あれはもちろん二コールが唄っているのだが、わたしなんて心震えたものだった。

 ということで世界的ヒット。スタッフはひのき舞台に狩り出され、すべての成功が約束されていた。
 しかし、ピエール・バローひとりのみ、成功の世界を拒否し、自分の世界へと旅立つ。自分が生きたいように生きる。ニホンジンの奥さんも、半ばあきれながら、すっかりとりこになっている感じ。
 ピエールは映画のなかでは、これも素晴らしいサンバを唄っていた。

 この映画は通俗的だけど、ややおセンチに言うと(笑)、わたしの青春が漂っている気がする。(でも、あたりまえだけど、映画のなかのような恋ってものには、出逢わないものなんだよね、そう思いませんか、えっ?相づちを打たせるなだって?)


                      (2006/06/09)