メキシコ映画「En el hoyo(「穴のなかで」)」(2006)


 
・「En el hoyo(「穴のなかで」)」、Juan Carlos Rulfo, メキシコ(2006)

評判のいいドキュメタリー映画。監督は、あのフアン・ルルフォの息子、フアン・カルロス・ルルフォ。残念ながら、前作をわたしは見てはいないんだが。

 だが同時にポレミックな作品でもある、いまのこの時季には。

 メキシコシティは、世界の大都市と同様に交通難に悩んでいる。かくべつ、朝夕のラッシュ時には幹線道にての渋滞がつづく。
 シティ政府は、それを解決すべく、周縁環状高速の立体化、二階化を志した。もちろん大事業。ただの一層のみの高架でなく、ずっと見上げるような高さの工事である。

 この工事、いま、大統領候補のロペス氏が始めたもの。当初は、自動車の道路よりも、より公共交通網の整備が大事なのではないかとわたしなども思ったものだ。しかし、着々と工事は進んだ。部分ずつ開通していく。

 ただし、工事区画は、わたしがふだんあまり行かない方角なのでほんとはあまりぴんとこないのだが。

 でも進んでいる。実行力を見せつけている。反対党からは赤字造りだけの工事だとか言われているが、そうでもないらしい。
 ということは、この映画、どちらかというと選挙運動臭い感じがつきまとってきそうだ。


 さて、当の映画の話。「穴の中で」(En el hoyo)というタイトルは、深い穴に落ち込んでしまった仲間を助け出す一こまに基づいている。
 数人の労働者に焦点をあわせ、その仕事ぶり、放し方、考え方などを取材していく。

 評判はいいものの、じつは半信半疑だったわたし。しかしおもしろいのだ、これが。構成の仕方もうまい。ただ話しの内容に卑俗なボキャブラリー等がはいってくるので、理解に苦しんだ箇所もあったことを付け加えておかなくてはならないが。
 仕事の場以外での追跡的アプローチもあった。
 興味深い仕事であると思う。

                    (2006/05/14)