邦画「稀人」(2004)


・「稀人」、清水崇、日本、2004年

 たしかに野心的な内容。はじめはいかに視ることに意識的になりうるかというテーマをプライベート・ムービー風に運んでいくその手際にあこがれた(おらだって、映画ぐらいは撮りたいゾ!主演女優募集中)。

 しかしやがて闇の世界に墜ちていく。サバトの「英雄たちと墓」もこんなトーンのところがあったんじゃなかったかな。

 そう、闇の世界、反世界、および生存(存在)といったものが問われていく。生きていくことの危うさ、なんていうと手垢がついたような気分になってしまうけど。

 だからひとたび出かけると、もはや戻ってはこられない。

 そしてそこにエロチズムでもからめば、おのずから身を喪っていくことになる。

 向こう側がちょっとでも見えさえすれば、きわめて怖ろしい作品だといえると思う。



                  (2006/04/17)