チリ映画「La frontera」1991

 ・「La Frontera」、Ricardo Larrain、チリ、1991

アジェンデ崩壊後のピノチェット独裁期において、もっとも重要な作品だとの触れ込みがこの映画。
 ”La frontera"(1991) Ricardo Larrain監督。

 国内流刑の話。
 そのテーマでは、フランチェスコ・ロージの「キリストはエボリに止まりぬ」(1983)というのが有名。
 イタリアファシズム期に南イタリアの辺境に流罪にあったひとの話。

 チリ物では、政治的失踪者の捜索に連帯する文書に署名したというだけで南の端にやはり流刑にあった数学の先生。監視下におかれるが、村の暮らしにもしだいに馴染んでいく。
 スペイン難民の父娘とかかわりあうようになっていく。いっぽうで、家族、妻と大学生の息子にも河の向こうから訪問され、流れ越しに面会。しかし妻は同伴してきた元同僚といっしょに暮らしだしたらしい。
 数学者は難民の娘と関わっていく。このあたりは、津波で有名らしく、何回か被害にあっている。ふたたび襲われ、娘は亡くなった父のそばを離れず、けっきょく娘をも失う。

 政治に巻き込まれた人間の悲しさというのがよく描かれている。これ以上、ラジカルなことに触れれば、お蔵入りになっていただろうことは容易に察せられる。

 この男はすべてを喪い、これからどうやって生きていくのだろうか、とだれもが思う。

(まあ、ニホンだって国内流刑はあったわけ。隠岐やら大島やら蝦夷地やら。業平の兄貴もそうだし。)


                       (2006/04/13)