邦画「OUT」2002

 ・「OUT]、 平山秀幸 、日本、2002

恥ずかしながら桐生夏生さんや高村さんのものは読んでこなかった。「OUT」の本は参考になるところがあるので(何の参考か、言わないけど)手に入れた。映画もさいわい録画できた。その映画版を見てた。この作品、お芝居でもTV映画でもあるっていう人気作品。

 それというのも現代の家庭の奥さんの生態やら悩みをうまく描き出しているからだろう。主役は原田美枝子だったらしいけど、いままでのかのじょとずいぶんちがっているようで、ぼお〜っとしてしまった。

 家庭というのがもはや家族の集合体ではなく不条理劇の舞台になってから久しいと思う。ストーリーの絡みはもちろんシリアスな話。家庭、家族がかかえる問題が如実に現わされてる。でもこれは特にこの作品だけが際立っているわけではなく、おなじようなものを取り上げたものはいまのニホンにはあふれてるかもしれない。

 ところが、ことばのやりとりによって、シリアストーン以外のものが湧いてくる。ただ、おかしみ、といっただけではどうにもならないような、不条理な、アナーキックな、それこそ演劇的なやりとり。背後にひとの命やらからだが置かれている以上に、ことばの自律的動きが著しい。それによって、この作品は殺人、死体遺棄という世間の枠組みをこえた向こうにたどり着いていると思う。

 とはいいながら、世間に囲まれた構図では、逃避しかないのは哀しい。そこにどんな希望をもてばいいのだろうか。その浪漫さそのものに浸りこめばいいのだろうか。どうせ日常生活ではどう逆立ちしてみても充たされず、裏切られるのみなのだから。

 ・・・・・

 ただ逃避行っていうのは、生産的ではないかもしれないけど、この作品の当事者にとっては、いままでの殺伐とした行き場のない暮らし方からみれば花火なんだと主張するかもしれない。後先のことを考えてる余裕なんてない。ごくわずかでも夢をみさせてくれと。そう言われると、かのじょたちの苦境をしらないひとたちが勧める救済はきれいごとで終わってしまうことにもなりかねない。
 ただ主役の原田美枝子役では、地方の焼肉屋のおかみさんになるという(生産的)夢がいっとき、存在したらしい。


 怖ろしいというのは、日本全国津々浦々、予備軍的主婦であふれてるっていうこと。
「すっごい話だわね。あたしも主人を恨んでるけど、あそこまではしないわよねえ」
 でも、その間には深い淵があるわけではなく、半端なブロックをいくつか並べてみれば渡れてしまうような小川なのだ。
「あ、あたしがしてしまった。。。どうしよう。そんなつもりはなかったのに。。。もしもし。。。ちか子さん? お肉、いっぱいもらったから、うちで焼肉パーティーしない?」
 なんてことになっちゃいそう。。。


                 (2006/04/11)