メキシコ映画「Miss Bala」、Gerardo Naranjo,2011、メキシコ

 メキシコといってもじつはシティあたりではナルコ(ドラッグ)グループの存在による脅威というのは差し迫ったものとは感じられない。
 それは北部諸州、またその他の地域において可視化されているが、この作品ではふつうの女の子がナルコ勢力にたまたま後押しされて州のミス・コンテストにて栄冠を得るが、女の子はつまりすっかりナルコらによって操り人形化され、そこで地方の政治・社会がレントゲンのごとく炙りだしにされてくる。
 あるいは地方というものがいかにナルコの下にシステム化されているか。
警察勢力はときたま一部のものの逮捕を仰々しく演出してみせるが、それはただの氷山の一角にすぎす、ナルコが生まれてくる土壌が存在するかぎり、いたちごっこ、というか、勝ち目のない戦いだと言ってしまったほうがよい。

おなじようにナルコを描いた、優れた“El infierno”と比べてみると、その派手さを言いたてない。
これだけ残虐で、しかもセックスがらみなのに精一杯、抑えた表現になっていたのはなによりもリッパで、見る人を脅かすのではなく、考えさせるという態度がよく見てとれる。


(12 of September, 2011)