メキシコ映画「Alamar(海へ)」、Pedro Gonzalez Rubio, 2010, メキシコ


イタリア人の母とマヤ人の血のユカタンのつつましい漁師を父とする五歳の子どもが、親の別れにもかかわらずひと夏を海辺で過ごす。
 ささやかな住まいも海上で、祖父とともに素潜りで伊勢えびを捕まえて卸しに売ったり、沿岸でさまざまな魚を釣り上げ、贅沢はいえないが確かな暮らしを築いている。
 子どもも潜ることから覚えて、海の暮らしに馴れ、その自然な暮らしを味わう。
 これはまるでルソーの「エミール」の話のようではないか。
 わたしの理解では、漁師の暮らしも船の持ち主などさまざまな封建的な障壁に妨げられてだいぶ搾取されているというイメージであったが、ここに見られるのは一国一城のあるじのごとき、悠々自適な暮らし。
 鰐やら海鳥などとも共生し、海上での牧歌的な毎日、こんな暮らしをわたしたちもしたい。
 場所はキンタナローだそうだ。

             (04 of September, 2011)