メキシコ映画「Vete mas alla, Alicia」(アリシア、もっと遠くへ)、Elsa Miller
アリシアはごく普通の家庭に育つ二十歳まえの女の子であり、自分を知るため、世界の果てをきわめてみたいと思い、単身、世界の果てへと旅立つ。
目的地はパタゴニア、氷と雪につつまれ、自分になにができるか、自分になにが起こるか、じっと見つめたいと思う。
あとはインティメイトな、淡々とした描写、心象風景がつづく。
濡れ場もあるにはあるが、控えに控えた表現。
青春期にそんな気持ちになるのは、当然である。
この若い監督は、2008年に映画学校の学生でありながら短篇がカンヌ映画祭で賞を委うけてしまい、いきなり脚光をあびる。
今回の作品は一時間ちょっとの、初長編作、そのみなもとは、やはり二十歳まえの自分のノートのメモからだという。
いわば青臭い自分探しである。
自分探しはいいことか、たいしたことないことか。
なにもしないことよりはいいことにきまっている。
しかしいまなら、本質より関係こそが大事なのだということは知られている。
その意味で、さきのモレリア映画祭にて上映されたときは不評で、この週末から一般公開。
メキシコ人にとっては氷と雪の世界は、荒涼感を象徴するのだろう。
だが当のボードレールからして、すでにAnywhere out of the worldと呟いているし、阿部公房あたりも壁というメタファーをもちいて世界の果てについて思考していたはず。
したがってこの作品は空回りしているかもしれない。
もっとも今だからこそわたしもそんなことがいえるわけであるが。
(シネ・ルミエルにて)
(13 of June, 2011)