カナダ映画「Barney's version」、Richard J. Lewis 、2010、カナダ&イタリア

ひとの生というのは蓋を閉めてみるまではわからないとよくいわれる。
 そのいっぽうで、生きてるあいだでもいくらでも充ちみちた幸せを感じ取ることもできるはずだ。
 はたしてどちらがより真実にちかいものなのか。

 たとえば企業人として、公的な顔の部分ではりっぱな業績をあげ、信頼されているひとたちがいる。
 いっぽうでは、真実の愛の見極めに不得手でやることなすこと空回りといった手合いもありうる。
 そんな場合は、家庭生活には恵まれないし、いわゆる苦楽をともにするパートナーとどう見つめ合っていけばいいのかわからないこともある。
 べつにすべてのひとたちが真実の愛にたどりつく必要はないかもしれない。
 たどりつけるのならば、それはそれでいいが、たどりつけないというのも、それは人間のスーパーマイティの不完全さを表すものでもあって、可愛げもあるかもしれない。
 ひとさまざまである。

 米国でのユダヤ人企業家という設定であるが、どっちみちフィクションの形でのある生の描写であり、その詳細さにおいて、その人物に惹かれずにはいられない。
 ひとの生とはなんであるか、そしてその到達点として、老いとはなんであるかが、滔々と語られている、しかし興味尽きない話しである。


(01 of June, 2011)