スペイン映画「La soledad (「ソリチュード:孤独のかけら」)」(2007)



・「La soledad (「ソリチュード:孤独のかけら」)」Jaime Rosales, スペイン(2007)

 2008年のスペイン、ゴヤ賞の優秀作品賞。
 小売業を営む老いた母親と三人の娘のエゴ等を描いた、しかしとても静か、静謐さにみちた(逆にいえば退屈な)作品。

 三人の娘にもそれぞれ問題がある。
 いっぽう、幼い子どもを抱えてマドリードに出てくる女もいて、やはりこの母親の娘かと勘違いしたが、そうではなかった模様。
 この女は養育費に困り、離婚直前といったところ。

 三人の娘も勝手なことをいいつづけ、おたがいにとげとげしくなっていく。

 テロによる負傷もふくめ、しかしながらすべてが淡々とすすみ、その静謐さから抜け出るためにこそ争いをでっちあげているのではないかと思えるほど。

 幼い子どもをかかえた女の入浴シーンのみで女の全裸像がリアリスティックに描かれ、そこにてこの女の存在感に圧倒される。

 しかし男の側からしてみれば(自分もふくめ)、このじゅうぶんに若くもない女の、いっしょに生きていくことからくる分泌的な嫌悪感、それと同時にそれにもかかわらずこの女に隠されているであろう汲めども尽きない魅力、という二律背反に悩むのだろうという予感におそわれる。

 そのはらみこんでいるものにもかかわらず、これほどまでもひっそおり感にみちているのも、むき出しの生の一部だといえる。

 監督の手腕云々を口にするまえに、こんな極私的印象をもつ。
 ある意味でニホン的作品ともいえる。


(2009/04/22)