米国映画「The Curious Case of Benjamin Button (『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)」(2008)



・「The Curious Case of Benjamin Button (『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』)」David Fincher、米国(2008)

 時間が逆に生起して、老人で生まれ、赤子へといたる話。
 すぐさま思い出すのは、アレッホ・カルペンティエールの「種への旅」という短篇。
 しかし原作がS.フィッツジェラルドの短篇だというが、初出は1921年、カルペンティエールのほうは1944年である。
 これも原典にあたってみないとわからないが。

 もっともこの話、悲恋性に重点をおくこともできる(おそらく原作ではそうではないか)。
 この悲恋、もちろんブラッド・ピットケイト・ブランシェットのあいだで成り立つ。

 じっさい、数奇な話である。
 ひとは盛りに達したとき、やがて訪れる老いのことを考える。
 しかしここでは盛りののちに、若さ、幼さを意識しなくてはならない。
 ひとは盛りにあるとき、さきを考えると悲壮な気持ちにもなるが、このように方向こそちがってもやはりウックツしてしまうものか。
 それを救うのは、ケイト・ブランシェット演ずるおんなのdevotionである、それこそがこの作品の救いになっている。

 黒人社会もふくめ、南部が詳細に描かれているのも特筆もの(時代背景もていねいに描く)


(2009/01/25)