アルゼンチン映画「Historias minimas」(2002)

・「Historias minimas」Carlos Sorin、アルゼンチン(2002)

 八十歳にもなる爺さんが行方不明になった犬をもとめて三百キロも遠くの街へあぶなっかしく旅立つ(犬といえばあの「ボンボン」もこの監督の作品)。
 
 貧しく若いおんなのひとが、赤子をつれてそのサン・フリアン市へとバスにのる。

 あやしげな商品でドサまわりのセールスマンは、未亡人になったおんなのひとに気に入ってもらおうと思い、その子どもの誕生日を知っていたので、サッカーボール形のケーキをもってその市へと車を走らせる。

 この三人三様の、日々のささやかな望みを達成するべくロードムーヴィーは展開される。

 しかしアイロニーがふくまれているわけではなく、三人三様のオチを見出す。
 そこに監督のやさしいまなざしを感じさせる。

 爺さんは、知り合ったひとの機転で、似ているだけの犬を持ち帰る。
 おんなのひとは、TV番組に出場し、賞品をもらったものの、他のひとの口車にのせられて、たいしたものではないものに取り替えられてしまう。
 しかしこのおんなのひとにとっては、その化粧品セットのほうが夢のあるものだったかもしれない。

 にやけたセールスマンは、誤解によって意中のひとをあきらめかけるが、それでも一途の希望はつながれるにいたる。

 パタゴニアという地の果てにて、流れから取り残されてしまったようなひとたちが、ささやかな姿、その生きている姿をみせ、生きていくことの苦労をしっているひとのみに愛されるような作品。


 スペインのゴヤ賞にて外国映画部門を受賞。


(2009/01/20)