マケドニア映画「Senki(Shadows)」(2007)

 ・「Senki(Shadows)」Milcho Manchevski、マケドニア、ドイツ、イタリア、ブルガリア、スペイン(2007)

 マケドニアという歴史的、政治的にも微妙さをはらんだ国の監督による作品。
 しかし、不条理的なサスペンスにみちていて、さながらコーエン兄弟の作品とダヴィッド・リンチのインランド・エンパイアを掛けあわせたような感じ。

 めぐまれた若い医者が、不可解な人物等に翻弄されて転落の道をすすむが、不可解な人物にはセクシャルなおんなもふくまれ、すべての意味で翻弄され、それでもなんとか謎解きをはかろうとする。

 整合性で筋のとおった世間から、なにかの拍子にはずれてしまえば、すべてが異なってみえてしまう。
 整合性と不可解さのあいだなんて紙一重なり。
 そこにかかわる歴史の地下水脈。

 さいごに、種明かしっぽくなり、なんだ、そうか、と納得してしまう。
 美しい街や田園、ひなびた音楽が漂うが、それでも肝心の映画つくりに手はぬいていない。

 官能性にもみちていて、それだからこそ、この不可解さも艶めいてみえるということだろうか。


(2008/11/23)