邦画「白鳥の歌は聞こえない」(1972)


白鳥の歌は聞こえない」渡辺邦彦(1972)

 K市にあった富士見映画館というのは、いつのまにか、駐車場に変わっていた。
 中学の終わりか、高校の初めか、庄司薫の映画を見た。
 じつは二本あって、どちらを見たのか、定かではない。たぶん、「赤頭巾ちゃん気をつけて」だったと思うけど、もしかして「白鳥の歌は聞こえない」だっただろうか(調べてみると、白鳥のほうらしい)。
 まあ、今にいたるまでこの作家の作品ってひとつも読んでないんだけど。

 前にも触れたことがあるかもしれないけど、村育ちだから市の映画館に出ていくのは、かなりの勇気がいった。
 ひとりで観にいった。

 もう長い年月が過ぎたので、よく想い出せるわけがない。
 いまいちはっきりしない男の子と、どこか生き急いでるような女の子、いや、行き急いでいるのでなく、自分に素直に生きてただけなのかな。
 女の子がどこかしびれを切らしたのか、男の子に対し、ブラウスを脱いでブラ姿で迫る。迫るんじゃないな、見せつけただけかな。
「あたしたち、明日には死んじゃってるのかもしれないのよ」

 それが映画の魔力なのか、わたし自身が、迫られているような気持ちになった。それに言うまでもないけど、女の子のホンモノのブラ姿なんて見たことはない。
 ウブな(笑、だけど、ほんまもの)わたしは、それこそ頭に血がのぼってしまったようなショックを受けた。

 もちろん今にいたるまで、おんなのひとの生まれたままの姿を見たことはかなりあるものの(かなりってどのくらい?)、あの映画館でのときほど、ときめいてしまった。。。いや、あわてふためいてしまったことはないな。
 月並みな言い方だけど、懐かしい。
 ああして、少年は大人になってしまうんだろうか。

 というか。。。やはり、わたしにとっておんなのひととは、ヒミツにつつまれた存在なのかなあ、と思うときがある。
 いまだに蒼いところがあるらしい。

 たしか併映は、「潮騒」だったと思うが、百恵ちゃんの前の映画化の作品だった。
 ポスターは、赤頭巾のしかないので、代替。

                  (2006/09/07)