イスラエル映画「James' journey to Jerusalem」(2003)


 イスラエル映画にアフリカの黒人? なんとも妙な取り合わせだあ、とポスターを眺めて思った。

 原題はヘブライ語かな、英訳名は"James' journey to Jerusalem"('03)という。西語訳は「エルサレムを思って」とか。
 エルサレム詣でにきた経験な若いアフリカ黒人が空港で違法労働者として捕まる。しかし、身請けされてあるエージェントに拾われる。そのエージェントとは、アフリカ黒人を仕事に送り出して搾取するという闇の世界。へえ〜、すごいなあ、自らの恥部をあばいてるよ〜〜! 単純なわたしはすっかり圧倒されてしまった。

 そこの黒人たちはパスポートは没収され、押し込められている。でもこの若者は。どうしてもエルサレム詣でがしたい。働きぶりもりっぱなので、エージェントはパスポートを返し、エルサレム行きを許す(1)。

 はじめはお金を蔑視していた青年だが、やがて高度商品経済に巻き込まれてお金に執着するようになる。エージェントの担当管理人は黒人たちを抑圧してインシデントを起こす。黒人たちのほうが分があると認められて、その青年が管理代表になる(2)。

 エージェントのボスは優雅に暮らすが、親父さんはあばら家に住んで立ち退きを拒否し、筋を通した生き方をし、当然息子であるボスとトラブルを持つ。
 青年たちは拘束されていない時間を用いて家事労働のヘルパーをして、ますますお金に執着する(3)。

 教会にも献金が増え、その豊かさが讃えられる。
 しかし、親父さんが立ち退くことを認めたことでパーティーが催され、青年はいくらか良心を取り戻し、ボスをつっぱね、それがもとで官憲に引き渡される。

 はじめはすごいな、と思っていたが、途中からインチキ臭さが目立ってきた。(1)理由が何であれ、そう簡単にパスポートを返すはずがない。(2)いくら黒人のほうに分があるにしろ、官憲が白人のかわりに黒人の肩をもつとは信じられない。(3)人づてに家事労働が広がっていくが、どうやらかなりの報酬をもらうケースがあったらしい、つまりイスラエル白人既婚婦人とアフリカ黒人とのあいだに性的関係があったらしい、と見て取れる。もちろん直接的暗示は避けている。しかし、そのような事実がもし映画にでも現れようものなら、とてつもない反響を呼ぶものと考えられる。もうひとつ、これらの黒人たちはいわゆる3K的な仕事を押し付けられていると思われるが、スクリーンに出てくるかぎりでは、生ぬるい仕事でしかない。
 結論として、これはイスラエルの自己批評的な作品ではなく、イスラエルの人道性・良心性をアピールする宣伝映画のようにみえてくる。

 この作品、ニホンでは公開されていないが、国際映画祭では何回か評判になったらしい。


http://www.james-journey.com/

          (2005/10/02)